美しい日本語を使い早朝の海の風景を描きつつ、天地創造の風景に想いを馳せた山村暮鳥の詩の世界観に感動し、「西洋の伝統的な歌曲とは違った響きをもつ日本歌曲を作りたい」いう想いで制作にかかった。
世界の始まりのイメージは国や文化や宗教、慣習によって異なる。この山村暮鳥が描いた東洋的な風景の中にある『海』から「自然の大きさと人間の謙虚さ」や「生物の調和」、そしてその穏やかな日常の中にある「世界の平和」などのメッセージを詩で使われている言葉が持つエネルギーや優しさを損なわずに作曲することを心がけた。日本語の美しさ、声の魅力、言葉の魅力を感じ取って頂いたら幸いです。この曲に取り組んでくださったメゾソプラノの吉村恵氏、ピアノの小滝翔平氏の熱演に感謝している。
うすむらさきのもやのはれゆく
海をみろ
此のすきとほつた海の感覺
ああ此の黎明
この世界のはじめもこんなであつたか
さざなみのうちよせるなぎさから
ひろびろとした海にむかつて
一人のとしよつた漁夫がその掌をあはせてゐる
渚につけた千鳥のあしあともはつきりと
けさ海は靜穩かである